昨今の家づくりでは太陽光発電や蓄電池、さらに非常時の給電システムなど、どうやってエネルギーをつくるのか、そしてどうやってエネルギーを消費するかを重視して計画されることが多いです。
今回はトヨタホームのクルマde給電について紹介します。
こんな方におすすめ
- トヨタホームを検討している
- クルマde給電が気になる
- 非常時給電システムについて知りたい
非常時給電システムを検討
非常時の給電システムといえば、蓄電池を想像される方も多いでしょう。
万一停電したとしても、蓄電池があれば室内の電気を賄うことが可能です。
発売当初は非常に高価な設備だったので、普及スピードはいまひとつでしたが、最近は価格が抑えられており導入を検討される方も多いでしょう。
また、一条工務店などの一部のハウスメーカーは商品によって蓄電池が付いていることがあります。
蓄電池は非常時に使えるだけでなく、日常的にも使えるので光熱費を抑えられるというメリットもあるでしょう。
たとえば、太陽光発電システムによって蓄電池に電気を蓄えておき、夜間は蓄電池から電気を使えば、電力会社からほとんど電気を買わずに済むのです。
※使用環境や蓄電池用量による
そのため、注文住宅の計画を進められている方の中で蓄電池の導入を検討したという方も多いのではないでしょうか。
しかし、いくら導入価格が安くなったとはいえ、100万円以上することがほとんどです。
光熱費が安くなったり、非常時に使用できたりなど、メリットがあること理解しているものの、100万円というのはなかなか高いハードルといえるでしょう。
トヨタホームのクルマde給電(非常時給電システム)とは
トヨタホームでは蓄電池を採用することも可能ですが、よりコストを抑える方法として「クルマde給電」というものがあります。
トヨタグループならではのシステムといえる画期的なシステムですが、どういった設備なのかあまり知られていないというものも事実です。
簡単に説明すると、クルマde給電とはハイブリッド車やPHV(PHEV)、EVなどクルマde給電に対応した車から電気を家の中に供給できるシステムです。
ハイブリッド車などに蓄えられた電気を家の中に送って、停電時でも電気が使えるとイメージすればわかりやすいでしょう。
クルマde給電でどのくらいの電力を供給できる?
最大1,500Wを給電できるので、一般家庭の約4.5日分の電気を車から賄うことができます。
※ プリウス、プリウスPHVの電力供給時間(満充電・ガソリン満タン/消費電力400W時)は約4.5日です。
※電力供給時間は車種によって異なります。 一般家庭が日常使用する電力量:1日あたり10kWh(家庭での1時間あたりの消費電力400W)として試算した場合。
一般的なLED照明は20W、スマートフォンの充電は15W、そして冷蔵庫は100W程度なので、家の中のほとんどの電気を賄うことができます。
ただ、実際にどれくらいの電力を供給できるかは、車種によって異なります。
というのも、クルマde給電というのは車に搭載されたハイブリッドバッテリーやEVバッテリーの電気を家の中に給電するというシステムです。
つまり、ハイブリッドカーやPHV、EVに搭載されているバッテリーから電気を送るので、搭載されている電気容量などによってどれだけ電気を送れるかが変わってくるのです。
また、車の充電状況やガソリン量によって、供給できる電力量が変わるということも理解しておいたほうがよいでしょう。
クルマde給電に対応している車種は?
クルマde給電に対応しているのはトヨタ(レクサス含む)のハイブリッドカーやPHV、BEVや水素電池自動車です。
コンパクトカー
- アクア(全車)
- カローラスポーツ(ハイブリッド)
- ヤリス(ハイブリッド)
ミニバン
- ヴォクシー(ハイブリッド)
- ノア(ハイブリッド)
セダン
- カムリ(Xグレード以外)
- プリウス(全車)
- プリウスPHV(全車)
- MIRAI(全車)
- カローラ(ハイブリッド)
ワゴン
- カローラツーリング(ハイブリッド)
SUV
- クラウン(全車)
- RAV4(ハイブリッド)
- RAV4 PHV(全車)
- ハリアー(ハイブリッド)
- C-HR(ハイブリッド)
- ヤリスクロス(ハイブリッド)
- カローラクロス(ハイブリッド)
- RAIZE(ハイブリッド)
- bZ4X(全車)
小型モビリティ
- C+pod(全車)
LEXUS
- UX250h
- UX300e
- NX350h
- NX450h+
- LS500h(Advanced driveを除く)
- ES300h
※2022年8月時点の情報
※一部車種はメーカーオプション
基本的にトヨタ車(レクサス車)であればほとんどの車種に対応しています。
ただ、一部のモデルではメーカーオプションとなっているので、オプションを付けていなければ使用することができません。
少し驚いたのは、アルファードやヴェルファイアには対応していないということ。
今回、紹介したクルマde給電対応車はトヨタ自動車の公式ホームページおよびクルマde給電のリーフレットを参考にしておりましたが、アルファード、ヴェルファイアともに記載がありませんでした。
クルマde給電の使用方法は?
クルマde給電の使用方法は非常に簡単です。
急な停電でも3つの手順で電力供給が可能になります。
1.切り替え操作
切り替えスイッチボックスを開けて、「系統電源」から「外部電源」に切り替えます。
2.ケーブルを接続
車両側についているAC100Vコンセントと家側のフランジインレットに「外部電源接続用ケーブル」をつなげます。
3.給電開始
給電が開始されます。
クルマde給電はいくら?
気になるクルマde給電の金額ですが、250,000円で導入できます。
蓄電池よりも非常にリーズナブルなので、採用されている方も多いかもしれません。
一般的な蓄電池の場合は100万円以上することがほとんどなので、1/4程度で採用できるのは嬉しいですよね。
ただ、ハイブリッドカーやPHVなどがなければクルマde給電の機能を使うことができず、そもそもハイブリッドカーはガソリン車よりも車体価格が高いので、「実際どうなの?」と思われる方も多いでしょう。
とはいえ、ハイブリッドカーはガソリン車よりも燃費がよく、燃料代を抑えられることも考慮すると、トータルコストを抑えられるかもしれません。
ただ、どこまでコストメリットがあるのか、そして25万円を支払ってまででも“コスト的に”元が取れるかどうかは検証が必要なところでしょう。
というのも、あくまでもクルマde給電は災害時などの非常時を想定しています。
つまり、光熱費を抑えるというよりは、急な停電時などに使用するという目的があるのです。
そのため、コストメリットという観点から見るとあまりお得感はないかもしれませんが、非常時にはきっと役に立つ設備といえるでしょう。
クルマde給電の注意点
25万円で採用できるトヨタホームのクルマde給電ですが、注意しておかなければならないポイントがあります。
洗濯機や大型電子レンジは使用できない場合がある
洗濯機や一部の電子レンジ、さらにIHコンロについては起動時の電力が大きいので、クルマde給電が使えないことがあります。
ちなみにクルマde給電の取扱説明書には「起動電力の大きい電気製品についてはご使用を控えてください。」と記載されています。
たこ足配線は使用不可
複数の電気製品を使用するためにたこ足配線を使用することはできません。
とくに高負荷がかかる電気製品については、故障の原因となってしまうので、たこ足廃線での使用は控えましょう。
ガソリンを使う場合がある
ハイブリッド車の場合、車に搭載されているバッテリー容量がEVほど多くはないので、クルマde給電を使って電気を送電しているとすぐにバッテリー内の電気が不足してしまいます。
そのため、ガソリンを使って(エンジンを始動して)発電し、そこから電気を家の中に送っていくのです。
つまり、車種によってはあらかじめ充電された電気だけでは電力不足となってしまうので、ガソリンを使用しなければならないのです。
回路が限られる
トヨタホームのクルマde給電はあらかじめ決めておいた回路でのみ使用が可能です。
つまり、家中の電気をすべてカバーできるというわけではありません。
たとえば、クルマde給電でリビング・LDKの回路を指定した場合、リビング・LDK内の電気のみ賄えるというイメージです。
そのため、そのほかの寝室や居室、お風呂やトイレへは送電されない仕組みとなっています。
ただ、最新のクルマde給電であれば、1回路ではなく、2回路に対応しているので、リビング以外へも電気を供給することが可能です。
まとめ
トヨタホームのクルマde給電を採用することで、車から電気を家の中に送ることができ、万一の災害時(停電時)でも最低限の電気を賄うことが可能です。
蓄電池のように毎日の電気をカバーするという目的ではなく、あくまでも非常時用の給電システムというイメージが強いでしょう。
さらに、電源ケーブルを給電インレットと車の1500W電源に接続しなければならないので、少し手間がかかってしまうのは否めません。
とはいえ、約4.5日分の電気をカバーできるというのは非常に心強いといえるでしょう。
トヨタホームの施主の中でも採用されている方が多い印象です。
ただ、V2Hシステムや純粋な蓄電池を採用するケースもあるので、何を導入するかについてはコストや使い勝手、使用目的に合わせて総合的に判断したほうがよいでしょう。